日本の霊長類を用いた神経科学研究は、マカクサルを用いたシステム神経科学、マーモセットを用いた遺伝子改変モデルなど、国際的に高い評価を得てきました。2000年代には神経科学に多額の国家予算が投じられ、この分野を先導する現在のPIたちが、霊長類のシステム神経科学という研究コミュニティーを形成し、緊密な連携を築いてきました。しかし、近年の自然科学研究や医学応用を見据えた潮流の中で、学際的研究により重点が移り、研究者も多様な学問領域との連携を促進させるなど、新たな可能性が広がった一方で、霊長類システム神経科学を軸とした研究者間の交流が減り、新たなネットワークを構築する機会が少なくなっているのが現状です。
また、研究者を取り巻く環境も大きく変化しています。特に近年、霊長類を対象とした実験に関しては倫理的配慮や社会的評価が重要視されています。研究者は質の高い研究成果を追求するだけでなく、このような社会的要求に応えるべく、継続的な研究技術や動物の飼育環境の改善などにも取り組んでいます。このような背景において、霊長類神経科学分野の研究者間の連携強化はこれまで以上に重要となっています。実際、海外に目を向けると、欧州、米国それぞれにおいてこのような連携を促進する取り組みが進められています。
このような状況を踏まえ、J-Primate-Next(JPiN)はスタートしました。JPiNでは、次世代を担う霊長類神経科学の研究者をメンバーとし、様々な研究活動やアウトリーチ活動を行うことによって、霊長類研究の重要性を国内外に広く発信しています。またメンバー間の横の連携を強固にすることによって、霊長類神経科学研究のさらなる発展を支える新たな研究者コミュニティの形成を目指しています。